旅先で出会った素敵な空間。この空間をこのまま持って帰れたらいいのになっと、誰でも一度は思った事があるはず。そんな空間にバリ島で出会った建主は、家を建てる時に、その空間を作りたいと思いました。
大阪市の郊外に位置する豊中市。小さな工場や倉庫が沢山集まる地域の中に、アジアンリゾートの要素を取り込んだ住宅を設計しました。敷地の前にはこの地域では少なくなった田んぼが広がっており、ご主人自らが耕しています。
家族が寛ぐリビングから田んぼを借景したかった為、最初に2階の道路側にリビングを配置しました。次にリビングと田んぼの間に庇のついた大きなテラスを設置。道路との間にこのテラスを挟む事で、道路から距離を取りリビングに落ち着きをもたらします。このリビング+テラスから発想を広げて、全体のプランニングを進めていきました。
1階部分は、寝室や和室などプライベート空間を中心に配置しています。寝室へのアプローチは、あえて長い廊下を通る様に設計し、他の部屋からすこし距離をとりました。離れの様な感覚で寝室へ向かう事により、気持ちのスイッチの入り切りを行う事ができます。寝室のさらに奥には寝室用の庭を設けて、奥まった中にも開放感をもつ寝室になっています。
和室は、室内に飛び石を配した露地からアプローチします。飛び石の廻りには、バリ島産のグリーンの玉石を配して、バリと日本を融合させています。壁には江戸時代から続く伝統をもつ長野県の内山紙を使用しました。今回使用した紙は、内山紙の中でも、タコ紙と呼ばれている紙で、新潟県の大凧合戦に実際に使用されています。床柱は、野性味のある香節(こぶし)をつかい、床框は黒檀を使用しています。和室からは隣地に立つ”地の家”の座敷を見せ、お互いにつながりを持たせています。露地の入口と和室の入口は戸襖とし、寛永元年創業の老舗、京都の唐長さんの唐紙を使用しています。
2階は、太い化粧垂木が見えるリビングダイニングの大空間にオープンキッチンを設置。道路側にテラス、キッチン裏側に洗面所・トイレ・浴室などの水廻りを置き、水廻りを挟んで居間の気配が感じられる位置に子供室を設けました。台所と洗面所とは、サービステラス(外部)でつなげて、ゴミ置場などに使用出来るようにしています。キッチンの横には1帖程のキッチン専用の収納を設けて、キッチン廻りの様々な物を収納出来る様に設計しました。リビングダイニングのフローリングは素朴な雰囲気の幅広なチークフローリング。水廻りは、硬質なイメージで水にも強いアイアンウッドフローリングと使い分けました。リビングダイニングの上部には、書斎にもなるロフトを設けています。天井の低さが生み出す安心感とリビングダイニングに向けて開けた開口部がもたらす開放感で、独特の心地の良さを生み出します。
外壁は、アジアンリゾートのイメージを大切にする為、柔らかさと質感をもつ素材を主に2種類選択しています。茶色い部分は、すべて板張りになっており、風雨に強いレッドシダー材を塗装して使用しています。また白い部分は、天然石貼りとし柔らかいイメージのライムストーンを選択しました。
内部空間には、建主夫妻がバリ島で自ら買い付けてきた小物・家具・絵画が設えてあり、アジアンリゾートの雰囲気を持つ自分たちだけの空間となっています。